飼い主(chiko)からのご挨拶
ごん太と名付けられた猫との出会い。
これは偶然ですが出会うべくして出会ったように思います。
たまたま友人に誘われて行った盆踊りの会場で、 見知らぬ中学生から「猫を飼ってくれませんか」と言われました。
普通なら「ごめんね、おばちゃん家はマンションだから飼えないんだ」と言って終わりの筈でした。
それが猫から目が離せない。それを友人も察したのでしょう。
「貰っておきなよ」 そんなに簡単な事じゃないのにそうしようかと思ってしまいました。
動物を飼うって言う事は、これから10年以上の責任を負う覚悟がないといけないと思います。
それがふっと飼いたいって思いました。

私自身がそう思い、友人が「飼いなよ」って言う理由があったのです。
大阪から転勤でN市に暮らして、6年が経っていました。
最初は誰一人知り合いもいない土地で、家に篭っていようと思えば篭っていられる環境にあった私は 誰とも関わらずに数ヶ月を過ごしました。
どうせすぐ大阪に帰るのだし、ここでの友達なんか要らないと強がっていました。
でも、離れて大阪時代の友人と連絡を取り合うほどマメでもなく、また友人達もそうでした。
そしてあまりの寂しさに外に目を向けるようになったのです。
きっかけはN市主催のテニス教室でした。そこで初めて友人が出来たのです。
それを機会にどんどん人と知り合って行きました、今までを取り戻すかのように。
いろいろな出会いがあり、その中には嫌な思い出もありますが、
この土地で生涯暮らそうと思えるほどの友人が出来たのです。
そんな矢先、夫の転勤が決まりました。
転勤先は大阪、そう戻る事になったのです。
私の母が一人暮らしをしていますので、夫は良かれと思いこの話を受けてきました。
友人たちもお母さんの傍に戻れるのだから良かったねと言いました。
私一人、この話を受け入れる事が出来なかったのです。
N市に来た当初、夫の転勤で自分の生活をおいて 付いていかなければならない妻の立場に憤りを感じました。
ですからN市で、自分作りをしたいと思いながらいろいろな事をしてきました。
友人作り、ボランティア、仕事もそういう気持ちで始めました。
そうして自分の基礎となるものの形がようやく見えてきた今、転勤の話が決まったのです。
N市でやってきた事、又すべてをおいて行かなければならない事がたまりませんでした。
友人達は「置いていくんじゃない、やってきた事は経験として貴方の基礎となっているよ」と 言ってくれます。
でもそれを聞く私には、そう思えるだけの余裕が無かったのです。
あの当時の私は今考えてもどうしようもなくめちゃめちゃになっていました。
幸い、仕事がありましたので何とか平静を保ってた部分もありましたが、友人たちの前では 我儘言い放題、やり放題で手がつけられませんでした。
体調の悪さがさらに私を追い詰めていました。
あんなに好きだったテニスも全くする気になれませんでした。
私の心の中ではひがみ、ねたみ、心の奥に巣くう暗闇の部分、それが大きく噴出し、 ずいぶん友人たちを傷つけたと思います。
そんなさなかに、私はごん太と出会ったのです。
この小さな命を守っていかなくてはと思える事が、私を立ち直らせるきっかけの一つとなりました。
勿論、友人たちの支えがなければ、ごん太を貰う気にもなれなかったと思います。
あと少しのきっかけがあれば何とか自分を取り戻せるという時にごん太と出会ったのです。
それが文頭の出会うべくして出会ったという表現になりました。

こうして私は残り少ないN市での暮らしを充分に楽しんで、たくさんの思い出を作って大阪へ行こうと 思っていました。
そんな時に事故を目撃しました。
あまりのショックに食事も取れない、眠れない、一人でいられない状態になりました。
私の状態にごん太も尻尾を逆立て、近寄ってきません。
私を守り、助けてくれたのは友人達でした。
一人でいられない私のために交代で家に来てくれました。
外に出て行けない私のために送り迎えもしてくれました。
引越し前のたくさんの用事のうち、N市でしなければならない事が出来たのは すべて友人達のおかげです。
そんな友人達に送られ、私はN市を後にしました。

いくら生まれ育った大阪とはいえ、友人達と離れた寂しさは言葉で言い表せません。
ふとした時に声が聞きたくなり、電話に手が伸びますが、そう素直に出来ない私がいます。
事あるごとに思い出し涙していました。
久しぶりの喘息が出て苦しく、さらに苦しくなる事が分かっているのに一人の寂しさから 毎日アルコールを飲んでいました。
飲まなきゃいいのに「BeerよりはWineなら良いかな」とか勝手な理由をつけて飲んでいました。
でもここには守ってくれる友人も、馬鹿な事をしていると叱ってくれる友人もいません。
自分で動き出さなきゃ事態は変わらない、それが分かっていたので仕事探しを始めました。
そしてごん太のHPも作ろうと思ったのです。

長い挨拶になってしまいました。
ごん太の成長を形に残したくて、私が今以上殻に篭らず自分を奮い立たせるために 日記をつけようと思います。